2014年からバター不足が深刻化している…。
2020年もスーパーで品薄になるんじゃないの?
てか、そもそもどうしてスーパーで品薄になるの?
こんな疑問に答えます。
バターが作られる工程と輸入の開始
なぜバターが不足するの?スーパーで品薄になる裏側の理由3つ!
2020年以降はバター不足が緩和されるが国内産のバターは減少
こんにちは!りゅうたき(@takkyhokkaido)です。
僕は北海道で2年間の酪農経験があり、牛から絞り出される生乳の裏側を間近で見て勉強してきました。
2014年にバターが不足した理由には、全国的な猛暑・搾乳牛の減少によって牛から絞られる生乳の量が減ったこと、駆け込み需要が増えたことなどが関係しています。
またその他にも、バターが全国的に不足する理由には、店舗で売られる前に起こる様々な裏側の事情が関係しているのです。
そこで今回は、北海道の酪農を経験してきた僕が、「なぜスーパーでバターが不足するのか?」裏側にある本当の理由をできるだけ分かりやすくまとめます。
- なぜバターが品薄状態になるのか気になる人
- これからもバターが不足するんじゃないかと心配な人
- バター不足の理由を知りたくても難しくて理解できない人
上記のような人は、ぜひ最後まで読んでみてください。
2020年5月現在、バターがスーパーなどで不足する原因は下記のツイートを参照。
『なぜバター不足が起こるのか?』
現在は自粛で暇だから、
✅家で子供達とケーキを作ったりする
✅保存が効くバターを買いだめするこんな要因でスーパーからバターがなくなっています。
また他にもバターが売られない原因が!?
👇僕のブログで度々バズる記事です👇https://t.co/uQoXCsEm8g
— りゅうたき🧙♂️牛に愛されたイケボ🐄❤️ (@takkyhokkaido) April 28, 2020
Contents
バターが作られる工程と輸入の開始

なぜバターが不足するのかを説明する前に、まずはバターが作られる工程から説明します。
牛から絞られる生乳は、出荷されて殺菌処理を行った後、私達が普段口にする「牛乳」へと名前が変わります。
家庭で生クリームから作る超簡単なバターの作り方は、下記の記事を参考に。
【超簡単】バターの作り方は生クリームを振るだけ!「5分で手作り」

ここで注目すべきなのが、牛乳を遠心力によって分離させた時に生まれる「脱脂乳」。
脱脂乳は乾燥させると脱脂粉乳となり、保存性・栄養価の高さから戦後の学校給食に使用されてきました。
しかし、2000年に起きた雪印低脂肪乳による集団食中毒事件によって脱脂粉乳の需要が激減し、これまでと反対にバターの需要が伸びることになったのです。
上記のよつ葉バターは、スーパーなどでもよく見るバターであり、通常であれば品薄になることは少ないでしょう。
ただ、2001年まではバターが店頭に余る光景が通常でしたが、2002年からはバター不足が発生することで国内のバターだけでは生産が追いつかなくなりました。
その結果、日本はバターの輸入を開始するようになったのです。
では、なぜバターがスーパーから売り切れるといった供給不足が発生するのか?
このように考える人が大半だと思いますが、日本でバターが不足してしまう理由には様々な事情が関係しているため、簡単にはバターの生産量を増やすことができないのが現状です。
なぜバターが不足するの?スーパーで品薄になる裏側の理由3つ!

バターが不足してしまう理由として、大きく以下の3つが考えられます。
- 生乳生産量に関わるバター不足
- 乳業メーカー・指定団体の意向によるバター不足
- 消費者ニーズに合わせたバター不足
どれもバター不足に繋がる重要な理由です。
だから全部読む必要は無いし、気になるところだけでも確認してみてね!
理由①生乳生産量に関わるバター不足

バターは、国内の牧場から仕入れた生乳生産量に合わせて生産量が決まります。
分かりやすく4つに分けました。
- 生乳の優先順位が決まっている
- 離農者拡大による国内の生乳生産量の低下
- 夏場は暑さによって生乳生産量が低下する
- 冬場には生乳生産量が増えることを考慮
1.生乳の優先順位が決まっている
日本国内で生産された生乳はバターなどに加工して販売する際、賞味期限の短い順に生産量を多く設定して生産しています。
飲用牛乳 > 生クリーム・ヨーグルト・チーズ > バター・脱脂粉乳
このように、日持ちしない飲用牛乳を最優先に生産量を決め、1番消費率が高い家庭用の飲用牛乳が不足しないように対策がされています。
また、酪農家や農協・乳業メーカー視点から見ても、上記の順番で生乳としての価値が決まるため、なるべく飲用牛乳として販売した方が利益を得ることができるのです。
だから、作っても利益の少ないバターはどうしても後回しにされてしまうんだね。
生乳を生産する酪農家は、指定団体が行う乳業メーカーとの交渉によって合意の元で乳価を決め、経営不振を起こさないようにしています。
ですが、生乳の使用用途によって乳価が変わってしまうと安定した収入を得ることができません。
そこで、国が補助金(加工原料乳生産者補給金制度)を用意して、生乳がどの用途で使用されても一定の乳価で生産者と取引が行われる仕組みができています。
出荷された生乳が加工原料乳として使用された際、乳牛メーカーが安い乳価で買い取ったとしても、国からの補助金を上乗せすることによって、決められた一定の乳価を保証する制度。
1965年から始まったこの制度は、50年以上経った今も無くなることはありません。
補助金は酪農家の存続に必要ですが、いくら補助金があるとはいえ、農協や乳業メーカーから見れば加工品を作る方が儲けが少ないことに変わりはないため、バター不足に繋がってしまうというわけです。
2.離農者拡大による国内の生乳生産量の低下

年々、酪農家の離農者拡大によって国内(特に都府県)の生乳生産量は低下の一途を辿っています。
生乳の生産量が減れば、その分バターにあてる生乳の量も減るため、”近所のスーパーでバターが品薄状態になる”といった事態が発生することになるのです。
最近では、2019年4月に各乳業メーカーが飲用牛乳の値上げを決定するなど、今後も生乳自体の価値が高まることで販売価格も高騰することは避けられないでしょう。
バター不足のように、牛乳が値上がりする理由については下記の記事を参考に。
【北海道に大打撃!】2019年度も牛乳が値上げする5つの理由とは

生乳は新鮮が命であり賞味期限も短いことから、離農者が拡大してバターに回せる生乳の量が減ったとしても、飲用牛乳の価値は到底下がりません。
国内で生産される食料の中でも食料自給率の高い牛乳を減らさないよう、農林水産省が酪農家を存続させるために行っているいくつかの制度も、離農者の拡大には追いつかないほど。
生乳の使用用途によって価値が変わってしまう今のままでは、酪農家としても飲用牛乳以外に使用されることでのメリットは存在しないのです。
3.夏場は暑さによって生乳生産量が低下する
生乳生産量は時期によっても左右されます。
本来寒い地域での生活に適した牛は、気温が高くなればなるほど体調を悪くし、乳量を下げてしまう要因となるのです。
夏場のような暑い時期は1年間の中で1番飲用牛乳が売れる時期であり、本来なら酪農家や農協・乳業メーカーにとってもかき入れ時です。
しかし、北海道に限らず、猛暑日が続くことで生乳を作り出す牛の体調が悪くなり、病気の感染が高まることも影響して乳量が低下してしまいます。
そうすることで、バターなどの加工品に使われる生乳の量は足らなくなり、スーパーで品薄状態になる可能性も高くなるのです。
4.冬場には生乳生産量が増えることを考慮

牛は寒い冬を耐えしのぐために、夏場よりも多くの餌を食べることで体温を調節し、乳房に蓄える生乳の量も増加させます。
よって、『酪農家にとって1番収益を出せるのが冬場の寒い時期』だということです。
しかし、乳が出るからといって酪農家全体が生乳の出荷量を急激に増やしたら、生産が消費を上回ってしまい在庫が残ることになりますよね?
と思うでしょう。ですが、先ほどの内容を思い出してみて下さい。
”生乳は飲用牛乳として販売する方が利益率が高い”のです!
だから、飲用牛乳の消費率が下がる冬場だとしても、極端にバターなどの加工品の生産を増やすことができません。
冬場には生乳生産量が増えるので、在庫が余ることを考慮してバターの生産量も増やします。
ですが、極端にバターの生産量だけを増やすと、利益が下がって同時に乳価も下げなければいけなくなってしまうため、バターを増やすのにも限界があるのです。
と思う人もいるでしょう。
そこで、次は乳業メーカー・指定団体側の取り組みを説明します。
理由②乳業メーカー・指定団体の意向によるバター不足

生乳自体の生産量だけでなく、生産者から消費者へ乳製品を届ける指定団体・乳牛メーカーの意向によってもバター不足は発生してしまいます。
- 在庫を抱えたくない乳業メーカーの意向
- 営業利益を上げたい指定団体の意向
1.在庫を抱えたくない乳業メーカーの意向
バターが不足してしまう理由には、実際にバターを作り出して販売する乳業メーカーの意向も大きく関わります。
飲用牛乳のような賞味期限が短い乳製品は、生産したら在庫として抱えずすぐに出荷する必要がありますが、バターや脱脂粉乳のような日持ちする乳製品は蓄えておくことも可能です。
でも、乳業メーカーはなるべく乳製品を在庫として抱えておくのが嫌なため、生乳の量が余っている時にバターなどを多く生産して保存しておくことをしません。
今まで、国の方針と合わせてなるべく在庫を抱えずに乳製品を製造していたメーカーは、今さら多額のコストを掛けて貯蔵庫を作ろうとはしません。
また、在庫を抱えたからといって必ず売れる保証はありませんし、一度食中毒のような事態が発生してしまうと、抱える在庫全てを廃棄しなければならなくなる可能性だってあります。
消費者としては常に供給を怠ってほしくないと思いますが、メーカー側の「在庫を抱えたくない。」という気持ちもわかりますよね。
国も、生乳生産量や乳業メーカーの在庫と照らし合わせてバターの輸入を調節していますし、バターが不足するとしても一時的なもので収まるはずです。
2.営業利益を上げたい指定団体の意向
酪農家は、全国各地にある指定団体に生乳の販売委託をすることで、自分達の牧場で生産した生乳を出荷しています。
生乳の販売先に関しては酪農家が自分で選択することが可能ですが、酪農家が飲用牛乳やその他の乳製品の需要を見極めて個別に出荷するのは困難なため、指定団体に委託するのが基本です。
しかし、酪農家からすれば同じ乳価で売れるなら自分達が育てる牛が作り出した生乳は、どこに売り出したとしても一緒です。
「指定団体を通して販売すると販売手数料を取られるから。」と、近年では指定団体を介さない生乳の取引を開始している牧場もあります。
補助金は生乳の使用用途によって乳価が変更しないように補助してくれるけど、それは指定団体で取引された生乳だけに限られているんだ。
全国に10個存在する指定団体の中でも、1番の大きさを誇るのが北海道にある「ホクレン農業協同組合連合会」。
指定団体が乳業メーカーに対して生乳の価格交渉を行うとともに、生乳の使用用途を振り分けています。
生乳を飲用牛乳として振り分ければ、その分指定団体としての営業利益も上がるわけですから、利益率の低いバターの生産量を減らされて、全国的にバターが不足してしまうというわけです。
今日の「ガイヤの夜明け」バター不足に切り込んでる。めっちゃ面白い。
— 藤井ペイジ(飛石連休) (@fujii_page) November 22, 2016
ガイヤの夜明け
バター不足のカラクリ。とても興味深い指定団体は解体しないと日本はダメになると思う
— Kuman (@Kuman068) June 13, 2017
録ったガイヤの夜明け見てるけどバター不足解消してほしい。何で牛乳があるのにバターだけ不足なのか不思議だった。あんまりマイナスな事は言いたくないんだけど、今はバター不足が続いている事実を改善するべきだと思います。おにゃしゃす、ホクレンさんと農協さん。
— ちろ@ELLEGARDEN (@babymetal_saku) November 24, 2016
ただ、指定団体の仕組みはあれど、元々不利な立場にある農家単体が乳業メーカーとの乳価の価格交渉をするのは現実的ではなく、未だに指定団体は酪農家の存続に欠かせない存在であるとも言えます。
また、指定団体が複数の酪農家が生産した生乳を一括で管理し、必要な時に必要なだけの生乳を分配することによって今の安定供給が保たれているのです。
「指定団体に販売手数料を取られたくない!」と考えるなら、自で生乳の販売ルートや廃棄を出さない工夫を凝らさなければなりません。
指定団体が自分達の営業利益だけを考えているのだとしたら問題ですが、バター不足の背景には日本国民のニーズの変化も関わっています。
理由③消費者ニーズに合わせたバター不足

生乳生産量や乳業メーカー・指定団体側の意向の他にも、消費者ニーズに合わせた結果バター不足になってしまうことがあります。
- 国内産を求める消費者ニーズ
- コンビニや高級な乳製品に使われる生クリームのニーズの高まり
1.国内産を求める消費者ニーズ
あなたは、スーパーに以下の2種類のバターが並んでいたらどちらを選びますか?
- 300円の日本国産バター
- 200円のニュージーランドなどが原産国のバター
統計結果がないので定かではありませんが、どちらかといえば日本国産バターを選択する人が多いはず。
バターに限らず、日本国産の食品は世界的にも品質が高いことで知られ、世界的に食品の品質が強化されている今でも「国産が1番安心!」と考える日本人が多いのが現状です。
国内の生乳生産量が低下し、政府がバターの輸入量を増やしたとしても国内産のバターを求める声が無くなることはないでしょう。
実際に、よつ葉の無塩バターはコストが低いうえに、北海道で作られた安心なバターとして人気です。(雪印のバターは値段が高く、売れ行きはよつ葉の方が上です)
特に、最近は健康志向の人達が増え、普段の料理やホームベーカリーなどでバターを使うニーズが高まり、下記のような大容量のバターが大人気!
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2.コンビニや高級な乳製品に使われる生クリームのニーズの高まり
記事の初めに、生乳は以下の順番で優先順位が変わると説明しました。
飲用牛乳 > 生クリーム・ヨーグルト・チーズ > バター・脱脂粉乳
この中でも、最近コンビニでよく売られるスイーツや高級なアイスクリームには生クリームがたくさん使われ、年々生クリームの需要が高まることで、液状乳製品の消費量が増えています。
そんな生クリームの人気を考慮し、農林水産省は生乳の使用用途割合の中でも生クリームにあてる割合を増やしています。
結果、バターや脱脂粉乳に使われる生乳の量が減り、バター不足を引き起こす要因となるのです。
また、カフェラテなどの飲用牛乳を使用した飲み物の需要が高まっていること、牛乳の健康面での効果を期待する声の高まりからも、飲用牛乳の生産量が高まっています。
ですが、だからといってすぐにバター不足が発生するとは限らず、逆に平成31年度のバター輸入量枠を1万3千トンから2万トンに引き上げるなど、国でも対策が行われています。
まとめ:2020年以降はバター不足が緩和される反面、国内産のバターは減少

今回は、なぜバターが不足するのか、スーパーで品薄になる裏側の理由を様々な観点から説明しました。
「2020年以降もバターが不足するのでは…?」と心配する人にとって助けとなる情報だとしたら幸いです。
2020年以降は、特別な理由が無い限りバター事態が不足するということはなさそうですが、生乳生産量の低下からも分かる通り、国内産のバターは減少していくことが予想されます。
酪農家の苦悩・バターの原料である生乳の大切さを噛みしめながら、バターを当たり前だと思わずに使用してきたいですね!
バター1つとっても、1つの食品として販売するまでには多くの人・製造工程を辿っています。
そこには、様々な思いや事情・戦略が詰まっているのです。
生鮮食品を扱う農業は年々規模が縮小しているため、これからもバターに限らず不足する事態が度々起こることが予想されます。
”お金を出せば食にありつける”今の状態を当然だと思わないようにしていきたいですね。
最後に豆知識
自宅でバター作りができるようになれば、バター不足にも柔軟に対応できるので、知っていないと損ですよ!

最後までお読みいただきありがとうございます。
バター不足は国産が無くなりつつある予兆です。今ある食材を日々大切に使用していきましょう!
Twitterもやっているので、良かったらフォロー&絡みに来てください♪(@takkyhokkaido)