「酪農家は朝が早い。」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
酪農は農業の中でも特に朝が早いことで知られ、早いところで朝の3時台から搾乳(牛の乳搾り)を始めているところもあるほどです。
僕も北海道で酪農実習生を行っていた頃、朝の3時過ぎには起きて牧場へ出勤していました。
しかし気になるのが、「なんでそんなに早く仕事を始めなければならないの?」という点。
そこで今回は、どうして酪農家の朝は他の農業と比べても早いのか、北海道での酪農実習生を経験してきた僕だからこそ分かる、酪農家の朝を詳しく説明します!
酪農家の朝を知りたい人
新規就農・酪農実習生に興味がある人
牛の生態について知りたい人
こんにちは!りゅうたき(@takkyhokkaido)です。
僕は、北海道へ移住して2年間「酪農」という農業を経験し、早朝から仕事を行ってきました。
酪農家は農家さんによっても朝の使い方に違いがあるので、実際に経験してみると面白いですよ!
Contents
酪農家が朝一番に搾乳を行う理由とは

「酪農家は朝が早い。」正にその通りです。朝が早い農家さんの場合だと、3時台には搾乳を始めるところもあるほど、酪農は朝早くから行う仕事として知られています。
基本4時~6時の間には搾乳を始め、酪農家の朝の仕事は1番のメイン作業である搾乳から始まるのが一般的です。
酪農家が朝一番に搾乳を行うのには、以下のような理由があります。
牛の乳房は12時間も経つとパンパンに張ってしまう為、早めに絞ってあげないと体調を崩す原因となる
1日2回搾乳の場合、夜の終わりを早める為に朝の搾乳も早く行う
生乳の出荷の時間までに搾乳を終わらせなければならない
これら以外にもまだいくつかありますが、どれも牛の体調を考えた理由、酪農家の個人的な理由と様々です。
「絶対に○時から!」という決まりはないものの、夜遅くにやるよりは朝の方が良いという考えの酪農家が多いのですね。
牛は1日を通してたったの約3時間程度しか寝ていません。『食べては少し寝て…また食べては少し寝て…』を繰り返しているのが牛という生き物です。
では、朝一番に搾乳をする理由を更に詳しく紹介します。
搾乳は1日2回!乳房炎になると生乳を出荷できない!

子供を産んだ牛の乳房は、12時間で乳房内のミルクがいっぱいになるとされていて、酪農家もそれに合わせて1日の搾乳を2回に分けて行っています。
ミルクの出る牛は、毎日一定の時間に絞ってあげないと乳房がパンパンに張ってしまい、”乳房炎”という病気を発生させてしまう事にも繋がります。
乳房炎になった牛のミルクは、県が定める生乳の品質基準を超えることが出来ない為、出荷を規制しなければならなくなるのです。
よって、なるべく牛の体調を悪くさせないように酪農家も日々努力を重ねているんです!
牛は体格がとても大きいですが、見た目と反対にとても臆病で繊細な動物であり、いつもと違う人が乳房に触っただけで乳房炎を発症させてしまう牛もいるくらいです。
酪農家にとって生乳が1番大事な収入源であり、農家毎にこだわりが強い部分でもあります。
生乳の出荷に合わせて搾乳時間を調節
搾乳によって絞られた生乳は冷却タンク(バルククーラー)に貯蔵され、出荷の時まで保存されることになります。
この貯められた生乳を、専用のタンクローリー(集乳車)が各牧場を回りながら集乳していきます。
集乳の時間は牧場毎に決まっており、集乳の時間までには搾乳を終わらせておく必要があるのです。
大体2日に1回、午前中に集乳をするのが基本ですが、普段より乳量が増えた時は毎日集乳に来てもらうように頼むことも出来ます。
また、搾乳中にトラブルが発生した時の為にも、時間に余裕を持って搾乳を開始するという意味も朝一番に搾乳をする理由に込められています。
酪農の主である搾乳を終えた後は子牛への哺乳と牛舎掃除

搾乳を終えて一段落した後は、子牛を産んだばかりの親牛から絞ったミルクを子牛に飲ませる哺乳(ほ乳)作業、夜の間に汚れてしまった牛達の牛舎を掃除する作業などを行います。
子牛は外の病原体から体を守る抗体を持たずに産まれてきます。よって、産まれてから1時間以内に親牛の抗体(免疫グロブリン)が入った初乳を飲ませる必要があります。
なぜなら、子牛が抗体を獲得する能力は産まれてから徐々に下がり続け、24時間を限度に2度と抗体を得ることが出来なくなってしまうからです。
ですが、親牛によって抗体の能力もバラバラである為、現在では親牛の抗体が規定量入った粉末タイプの初乳も販売されています。
良い牛を育てる課程は、産まれてからすぐの子牛への哺乳から始まるのです!
産まれてから子牛の病気を蔓延させないなどの理由から、子牛は個別のハッチに入れて個別飼育をするのが基本です。
・換気を良くし、綺麗な空気を入れてあげる
・糞尿で汚れた敷料をなるべく綺麗に保つ
・カーフジャケットを着せるなど、寒さに弱い子牛を暖める対策
などなど、子牛を育てる上で気を付けないといけないことは数多く存在する為、朝には徹底された子牛の管理が重要となるのです。
将来の質が高い生乳を生み出す為にも、牛ちゃん達には愛情を持って接する必要があるね!
牛の寝床であるベッドや歩く場所は、常に綺麗にしておかないと菌の繁殖を招いてしまい、乳房炎など牛の体調を悪くする原因を作ってしまうことになります。
なので、当然子牛だけで無く親牛が生活するスペースの糞尿掃除にも注力しなければならないのです。
たった1日いつもの清掃を行わないだけで重度の病気を蔓延させる危険性もあるので、生き物を扱う酪農は簡単な仕事では無いことが十分に分かりますね!
農家さん毎に朝の作業時間は全然違う

ここまで、ザックリと酪農家の朝の仕事について説明してきました。上記で説明したのは、どこの酪農家でも必ず行われている作業です。
その他にも、
・分娩を終えた親牛の対処や移動
・搾乳中の牛と新しく搾乳する牛の入れ替え
・具合の悪くなった牛の治療
などなど、朝に行う仕事はまだまだあります。
更には、牧草刈りを行う繁忙期の場合だと、朝の仕事を終えたらそのままトラクターに乗って牧草刈りへと出掛けることもあるので、酪農はなかなか重労働の仕事です。
通常、朝の作業が終われば一旦休憩です。酪農実習生は朝と夕方しか作業を行いませんが、酪農家は昼の時間帯も牛舎の掃除や餌やりを行うので、作業時間はその分長くなります。
完全に個人だけで経営している場合はとても大変だけど、従業員を雇っている農家さんは割と時間に余裕を持っている人が多いよ。
お金を払えば、『酪農ヘルパー』と呼ばれる作業代行を頼むことも出来るしね。まあ、これらが無ければ年中無休なのが酪農という仕事だから、大変なのに変わりは無いけど。
僕は酪農実習生としてだけでなく、数ヶ月従業員としても農家で働いたので、十分に酪農家の大変さが分かりました。
酪農実習生では朝・夕の搾乳しか手伝いませんが、昼の作業もとなれば早朝から1日中酪農作業を行っているなんてことはザラです。
正直、本気で酪農が好きじゃないと、従業員としてやっていくのも辛いと思います。
まとめ:早朝から行う酪農業も魅力がたっぷり!

今回は、早いところで早朝の3時台から作業が始まる、酪農家の朝について詳しく説明しました。
ザックリと話してしまったところもありますが、参考までに何となくイメージしてもらえれば幸いです。
農家さん毎に朝の作業に掛かる時間は違いますが、生乳を生産する上で行うことは大体どこも同じです。
北海道のような寒い地域は、牛にとっては好環境でも僕達人間にとっては非常に過酷な環境下となります。
ましてや朝の1番寒い時間から始まる酪農は、体に相当な負担が掛かっているのも事実です。
しかし、普段何気なく飲んでいる牛乳の裏側には、酪農家の多大なる努力と牛達の大切な多くの命が関係しています。
仕事内容は大変ではありますが、『1日を有効に使う・命と真摯に向き合いながら生産物を生み出す』という意味では、早朝から行う酪農業も魅力がたっぷりですね!
最後までお読みいただきありがとうございます。
新規就農を考える際にも、酪農を知らない人にとって酪農家の朝を知る良い機会となれば嬉しいです!
Twitterもやっているので、良かったらフォロー&絡みに来てください♪(@takkyhokkaido)