街のスーパーやコンビニで売られる牛乳。紙パックや瓶入りの牛乳はあるのに、『ペットボトル入りの牛乳』は全く見ませんよね?
最近では、ミルク入りのコーヒーまでもペットボトルで販売されるほど、持ち運びの便利さからペットボトルを使用する飲料が次々に販売されています。
「どうして便利なのに牛乳はペットボトルで販売されないの?」という疑問を抱く人が大半だと思いますが、実は法律上ではペットボトル入りの牛乳の販売は許可されているのです。
そこで今回は、ペットボトル入りの牛乳がなぜ無いのか。紙パックや瓶を使用して販売する理由は何なのかについて、コストも関係する理由5つを詳しく紹介します!
ペットボトル入りの牛乳がなぜないのか気になる人
牛乳を手軽に持ち運びたいと考える人
牛乳がペットボトルで売られない裏事情が知りたい人
こんにちは!りゅうたき(@takkyhokkaido)です。
僕は北海道へ移住して2年間「酪農」という農業を経験し、牛から搾り取られる生乳についても勉強を重ねていました。
結論を言うと、牛乳はとても栄養素が高い食品なので、雑菌の繁殖によって食中毒を起こさないためにも、ペットボトルに入れて販売することは好ましくないのです。
Contents
なぜペットボトル入りの牛乳が無いのか!?コストも関係する理由5選!

ペットボトルが日本で清涼飲料水用として使用されたのは、1982年からのこと。2019年現在では、ペットボトルの使用量割合は清涼飲料水用が9割を超えています。
ペットボトルが清涼飲料水用に使われる理由には、
軽くて持ち運びにも便利
好きな時に容器を移さず飲める
捨てる時も洗って潰すだけで簡単
以上のような理由がありますよね?
しかし、2007年には法律でペットボトル入りの牛乳の販売が許可さているのにも関わらず、2019年に入った今も依然として牛乳をペットボトルに入れて販売しているメーカーを見かけません。
「なぜペットボトル入りの牛乳が販売されないのか?」その理由として考えられるのは以下の5つ。
牛乳パックや瓶だと雑菌の繁殖を抑えられて衛生面で良いから
瓶の見た目や容器が美味しさに影響するから
牛乳パックや瓶の方が製造コストを抑えられるから
牛乳専用のペットボトル製造機の製造コスト問題
牛乳パック・瓶製造メーカーの存続問題
最初は瓶から始まった牛乳も、今となっては牛乳パックでの販売の方が目立ちます。
清涼飲料水用のペットボトルの普及を考えれば、『瓶→牛乳パック→ペットボトル』といったように進化をしていきそうですが、日本では以上のような理由で実現が困難な状況です。
ただ、アメリカなどの海外の国ではペットボトル入りの牛乳が1番のシェアを誇っているのも事実。
1.牛乳パックや瓶だと雑菌の繁殖を抑えられて衛生面で良いから
牛が自ら産んだ子牛の為に生成する生乳には、多くの栄養素が含まれています。
しかし、牛乳を摂取する事で豊富な栄養を得られる僕達人間と同じように、細菌などの微生物も牛乳の栄養素を摂取するとパワーを付けて悪さをするようになります。
牛乳は他の清涼飲料水用とは違い、栄養素が高すぎることが仇となって雑菌の繁殖を高めてしまうのです。
最近は酪農も機械化が進んでいて、絞った牛乳がそのまま出荷まで保存する冷蔵庫(バルククーラー)に届けられるようになっているなど、雑菌の繁殖を防ぐことは鉄則とされているね。
仮にペットボトルに牛乳を入れて販売したとしたら、常温で持ち出したり口に付けて飲んだ後にキャップを閉め、また時間を空けて再び牛乳を飲む事になりますよね?
そうすると、本来摂氏10度以下で保管しないと雑菌が繁殖してしまう牛乳に対し、人間の唾液を加えることで更なる雑菌の繁殖を手助けしてしまうのです。
人間の唾液には約700種類の細菌が含まれ、歯垢には1g辺り1000億個もの細菌が付いていると言われています。
そんな唾液を牛乳に付けてしまったら、みるみるうちに細菌が牛乳の中に繁殖して悪い細菌を増やしてしまうのが、容易に分かるのではないでしょうか。
※瓶は口に付けて飲むことがありますが、残さずに飲み干せるよう少量にして販売するといった工夫がメーカー側でなされています。
よって、”雑菌を抑えられて衛生面でも良い”ことから、ペットボトル入りは普及せずに紙パックや瓶入りの牛乳が主体となっているのです。
2.瓶の見た目や容器が美味しさに影響するから

牛乳は入れられる容器によって、見た目からその美味しさに影響します。
一度想像してみて下さい。
・瓶に入った牛乳
・紙パックに入った牛乳
・ペットボトルに入った牛乳
以上3つの内、どれが1番美味しそうだと感じますか?
恐らく、ほとんどの人が「瓶に入った牛乳!」と答えるのでは無いでしょうか。
日本では明治21年頃から瓶に入った牛乳が流行りだし、瞬く間に”牛乳と言えば瓶入り!”と言われるようになりました。
技術の進歩によって紙パックやペットボトルが普及した今でも尚、瓶入り牛乳の人気は衰えることはありません。
実際に他の容器と飲み比べる実験を行って、科学的に瓶で飲む牛乳の美味しさが証明されているほどなんだよ!
銭湯などの大浴場に行くと、今でも休憩スペースに瓶入りの牛乳が販売されていて「ついつい買って腰に手を当てて飲みたくなる。」なんて人も多いのではないでしょうか?
普段コップに入れて飲む牛乳よりも、ビンに入った牛乳って何だか美味しさが違う気がしますよね。
2012年に発表された、金沢工業大学と明治食品開発研究所による共同研究。そこには「なぜ牛乳はビンで飲むと美味しいのか?」を解明した結果が記されていました。
マグカップに入れた牛乳とビンに入れた牛乳の香りの差は約3倍!
マグカップよりも冷たさを感じる!
ビンの飲み口が心地良いヒンヤリ感を演出!
持ちやすくて飲みやすい!
飲む際に一気に口に入ってくるのが美味しい!
研究結果から、見た目や容器によっても牛乳の美味しさは変わり、ビンが牛乳の美味しさを引き出しているのが分かります。
ですから、ペットボトルでは決して再現できない見た目や容器によって牛乳の美味しさが左右されてしまう為、乳製品メーカーもペットボトル入りの牛乳を好んで作らないのです。
3.牛乳パックや瓶の方が製造コストを抑えられるから
ペットボトルは安価に製造できるイメージを持っている人も多いかと思いますが、牛乳パックや瓶と比べると製造コストは割高です。
コンビニに並んでいる紙パックとペットボトルの値段を、以下のように見比べてみると分かりやすいです。
・ペットボトル入りのジュースは500ml入って120円~150円
・紙パックに入ったジュースは1ℓ入って100円もしないほど
圧倒的に紙パックが低コストで売られていることが分かりますよね?
瓶の場合は、最初の製造コストは高くなってしまいますが、牛乳を入れる瓶は煮沸消毒によって繰り返し使用することが可能なので、ランニングコストを考えたら他のどれよりもエコです。
安全・安心で更には低コストで牛乳を摂取できるなら、消費者にとっても紙パックや瓶入りの牛乳の魅力が高まって、ペットボトル入りの牛乳が必要では無くなるよね。
製造コストが高くなるということは、すなわち生産者・消費者共に受ける負担が大きくなるということです。
どちらにも利益が無いことを、好んでやろうとはしませんよね?
なので、ペットボトルよりも製造コストを抑えられる牛乳パックや瓶を使用することが、牛乳を販売する上での基本となっているのです。
4.牛乳専用のペットボトル製造機の製造コスト問題

正直、これがペットボトル入りの牛乳を実現する際の1番の障害となっているのは間違いありません。
2007年に制定された法律では、牛乳をペットボトルに入れて販売する際には以下のような条件をクリアするように定められています。
購入者が常温で持ち運びしないよう、一度で飲みきれるサイズである350ml以下の容量
ペットボトルの口に直接口をつけて飲んだり常温で持ち運び出来ないよう、開栓後は冷蔵保存を基本とする720ml以上の容量
以上、2つの条件をクリアした容器でないとペットボトル入りの牛乳を作ってはいけないことになっているのです。
牛乳は他の清涼飲料水用と比べて賞味期限が短く雑菌も繁殖しやすい為、持ち運びに便利な500mlほどのサイズや大サイズでの販売には向きません。
よって、食中毒になる危険を冒してまで需要の少ないペットボトル入りの牛乳を販売しようとは思わないわけです。
更には、上記に挙げた条件をクリアするペットボトルを再現するには、牛乳専用のペットボトルと高額の充填方法を搭載した機械を導入しなければなりません。
製造機の実現には数十億円の設備投資が必要となる為、日本のどこの乳製品メーカーもペットボトル入り牛乳の実現には手を出さないというのが現状なのです。
乳製品メーカーが牛乳を従来の紙パックや瓶での販売を続けながら、新しくペットボトル入りの製造機を導入しようとしたら、機械費・設備費・人件費が増えることになります。
新しく起業するとしても、「それだけ莫大なコストを賭けてまで行う価値があるのか?」と考えたら答えは明白。
元々需要もあまりないものを、他に無い新しいものだからといって大手メーカー・新規参入者が試すわけがないのです。
5.牛乳パック・瓶製造メーカーの存続問題
最後に、裏事情として存在するのが牛乳パック・瓶を製造しているメーカーの存続問題です。
国内の牛乳パックシェア率最大手の「日本製紙グループ」や、瓶製造メーカーは牛乳を主力として利益を得ています。
なので、ペットボトルが牛乳の容器の主体になってしまうと、牛乳パック・瓶製造メーカーの経営が上手くいかなくなり、下手したら業界から撤退することもあるのです。
しかも、牛乳パックや瓶は他の清涼飲料水用などにも使われているから、大手メーカーが倒産してしまうと他への影響も計り知れないよね。
また、未だ銭湯などで販売されているビン入りの牛乳には、銭湯と牛乳宅配業者・乳製品メーカーとの太い横の繋がりがある為、今でも存在が無くならないといった理由もあります。
日本経済にも大きな影響を及ぼす紙パックやビンは、衛生面・美味しさ・コスト面以外に製造元の裏事情もあったのですね。
まとめ:牛乳は好み別に紙パック・瓶から容器を選ぶのがおすすめ!

今回は「考えてみればなぜ無いのだろう?」と疑問になるペットボトル入り牛乳について、大きく5つの理由からなぜ無いのかを説明しました。
実現には、設備投資だけで数十億円のコストが掛かるペットボトル入り牛乳。どのメーカーも開発に踏み出さない理由が分かりますよね。
まあ、低コストで手に入れられて尚且つ美味しくいただけるなら、今まで通り牛乳は紙パックか瓶で飲むようにしたいですね!
少量で美味しく飲みたいなら瓶入りの牛乳
少しでも長く新鮮な牛乳を飲みたいなら紙パックの牛乳
このように、自分の好み別に牛乳の容器を選択して飲むのがおすすめです!
栄養素がたっぷり含まれた牛乳は、美容にも良い効果を発揮しますよ!
最後までお読みいただきありがとうございます。
利便性だけにとらわれず、これからも牛乳を安心安全に美味しく飲める方法で摂取していきましょう!
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